田の中屋
岐阜県大垣市にある老舗煎餅屋「田中屋せんべい総本家」が上石津町時地区に開業した里山カフェの計画。風景を眺めながら地元食材のメニューを楽しむだけでなく、地産地消・地域文化の発信地を目標に掲げ、地域の未来に向けた活動の場として行くことを望まれた。
この地域は東西を養老山地、鈴鹿山脈に囲まれていることで積雪量が多く、自然豊かで米作りに適した条件が揃っており農作を行っている民家が多数見られる。建物に目を向けると母屋に付属する複数の別棟で構成された建築群が物や人と親密に関わりあいながら生活が営まれている様子を垣間見ることができた。本計画もこのような民家として使われていた母屋・カーポート・納屋からなる建築群のリノベーションである。建築と生活が密接に絡み合っている現状を少ない操作で解き(ほどき)、以前からある地域性を継承しながらも新たな活動の場として地域に再接続することを試みている。
具体的には、間引く・付足す・新設する、といった操作を適度に施すことで既存建物が持つポテンシャルを引き出して行く計画とした。カフェとショップが入る母屋は床・壁・天井を適宜間引いて構造補強を行い、当時の間取りを参照しつつ必要な機能を配置した。カーポートはそのまま再利用して屋根付きのかまど場(カフェで提供するごはんを炊く)とした。納屋はカフェのランドマークとなるように既存外壁の上から角材を打ち付け表情を一新し、内部は既存土壁を残したまま、床にレンガを敷き詰めてイベントスペースとした。最後に小さなトイレ棟を道路側に新設することで、店の前に程よく囲われたオープンペースを設えた。
また、竣工後も主体的にこの場所に関わることができるように、地元工務店協力のもとでかまどや焼杉の製作ワークショップ、解体時の廃材を再利用したテーブル作り等を行い、建築プロセスを地域住民や支援者と共有している。
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田の中屋
岐阜県大垣市上石津町堂之上1023-1
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撮影 / 野村優写真事務所
グラフィック・webサイト / through
完成日 | 2023.07 |
用 途 | ショップ&カフェ |
価 格 | |
サイズ | |
構造・材料 | 木造(リノベーション) |