SLBH 11
立体ワンルームの躯体と更新可能な要素
敷地は1970年初頭のニュータウン開発によって形成された雛壇状の住宅地にあり、これまでに建築が建ったことはない。GLは前面道路より1,800mm高く、50年前の擁壁(玉石積みの上に化粧コンクリート)が車1台分のスペースを残して建っていた。当時は1台の駐車場を想定していたであろうが、それでも駐車場を確保するには相応の土留めが必要であった。構造を担保できない当時の擁壁、地方都市における駐車必須台数、雛壇上の敷地、向かいの公民館といったコンテクストと、屋根付き駐車場、アウトドアでの食事(バーベキューなど)、限られた予算といった条件を満たすためにコの字型のコンクリート擁壁を中央に挿入した。それにより生まれた谷はレンガ敷きとし、駐車やアクティビティが可能な、周辺環境やコミュニティとのインターフェースとした。台地には構造的負担を担保できない既存の隣地擁壁から安息角分の距離を取り建物を配置、棟間に木造トラスの橋を架け、最小限のフットプリントで最大限の内外空間を確保。周辺と敷地の高低差は内部空間にも現れ、各棟の床レベルと橋、屋上や庭、橋の下などがズレながら繋がり、敷地が緩やかな立体ワンルームのようになっている。構造に関わらない部分はアドホックに設計施工を行っており、デジタルファブリケーションで平面的に加工された部材と現場の端材を使用して床、階段、手摺りなどをつくった。溶接や接着などの2次加工は行わず、加工された部材同士をボルトや楔で接合し、職人でないと難しかった納まりを容易にすると共に、加工を減らしコストを抑え、平積できるため運搬性も高めている。構造躯体以外の各要素の更新を容易にすることで、将来の変化に対応し、ソフト・ハード共に建築が育っていくように考えた。
掲載:住宅特集2023.02号
Photo:新建築社
完成日 | 2023.03 |
用 途 | 個人住宅 |
価 格 | 21,500,000円(without tax) |
サイズ | 延床面積:81.45㎡ |
構造・材料 | 木造 |