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INTERSECTIONS -case06- TRAVELLER Coffee House × Yuma Yasue

“INTERSECTIONS edit by TAB Journal”とはTABがこれまでに関わらせて頂いた場所や空間で過ごしている方々に焦点をあて、インタビューしていくコーナーになります。
※今回の記事は2020年2月13日に取材しました。

第六弾として2017年9月にオープンしたカフェ「TRAVELLER Coffee House店長である「安江悠真」さんにインタビューを行いました。お店のオープンまでのプロセスやオープンしてからの展開、今後の展望についてお聞きしました。

TAB:「TRAVELLER Coffee House」が始まる経緯を教えてください。

安江:私の所属する大日コンサルタント㈱は、主に道路や橋などの社会インフラを扱う会社です。私は、都市計画やまちづくりに関する様々な業務に携わっていました。「TRAVELLER Coffee House」のプロジェクトは、2016年度に、飛騨地域創生協議会(飛騨市、高山市、下呂市、白川村)という機関から外国人観光客の調査事業の仕事を請け、当時の上司と一緒にこの仕事を進める中で、飛騨に関わったことがきっかけでした。

TAB:なるほど、調査事業をされていたんですね。その調査の結果はどんな感じだったのでしょうか?

安江:高山市は、インバウンドの誘致に成功した先進地として有名で、国内外から多くの観光客が訪れています。ところが、実際に調査してみると、人がたくさん来すぎて受け入れ側となる地元民が疲れてしまっていたり、エスノグラフィー調査(模擬旅行)の結果、高山市の観光満足度が近隣の市村よりも低くなっているということが分かりました。その結果から、今後の課題としてホスピタリティの向上などを盛り込んだ報告書を提出したのですが、その時は、課題を抽出するだけで終わってしまい、少しモヤモヤが残りました。

次年度になって、社内で、地域に拠点を作る新たな取り組みを始めるという話が出たとき、高山市であれば、街中で観光客に地元のおすすめの場所を紹介したり、地元の人の声を聞いたりすることで、観光客と地域の中間に立つ取組ができるのではないか?という話になりました。どんな空間であればそれができるのか?ということを上司と考え、現在につながります。

TAB:なるほど。お話を頂いた時には「観光客が立ち寄り地域の情報を得られるようなカフェ」と企画内容がまとまっていた印象があったので、調査の報告をした時の悔しさもこのプロジェクトを進める原動力になっていたんですね。当時はここまで聞けていなかったので今聞くと面白いですね。

安江:当時は、コンサルタントとしてまちづくりに関わる限界も見えていた状況で、打開策として自分たちでやってみる!という流れがあったと思います。このプロジェクトも、観光を切り口にしていますが、将来はもっと広く、まちづくりに繋がるような活動に繋げていきたいと思っています。

TAB:お話を頂いてから、高山市で候補としての物件をいろいろ見て回りましたよね。さきほど、候補から外れた物件はカフェになっていました。「TRAVELLER Coffee House」があるこの通りも工事をしていた時よりもお店が増えているような気がしますね。

安江:そうですね。物件を回っていた時に空いていた物件は、今けっこう埋まっています。この物件の隣も今解体工事をしていて、もうすぐ新しい施設ができるときいています。国分寺通りはにぎわっている印象ですね。あと、TRAVELLER Coffee Houseが入っているこのビルの2階の部屋も会社で借りて、去年の夏に改装しました。

↓2階オフィス風景(写真:安江さん提供)

TAB:お店を運営してみてどんなことがありましたか?

安江:去年くらいから「安江くんおる~?」と来てくれるお客さんも増えて来たのですが、お店にいない。2階にもいない。という状況が続いて「お前、いついってもおらんな」みたいな感じになってしまって、ヤバイと思っています笑
本社の仕事もしているので、毎日お店に立っていないのが悩みです。地域の中で「〇〇がコーヒーを淹れている店」という印象は大事だと思うので、会社としての立ち位置と、お店の顔としての役割、結構難しいですね。。。

お店としては、最初はオシャレなカフェ。という印象でしたが、観光の情報をずっと出していたので、徐々にですが、観光にタッチしたい団体がやっている認識が定着してきたように思います。
この前お店にやってきた観光客の方がTRAVELLER Coffee Houseで配布しているマップの白黒コピーをもっていて、どうやら地域内のホテルで配っているみたいです。笑

また、お店で集めたインバウンドに関する情報を活かして、地元の人と一緒にイベントをやっています。内容は観光についてのワークショップ、グーグルマイビジネスについてなどの実践的なことから、飛騨地域のお金についてや異文化について話をする会などいろんなジャンルのものをやってきました。1年で10回以上開催して、月一で集客人数10~15人くらいのイベントを続けていくことは結構大変だなと思いました。笑


↑観光WSよるの部


↑googlemyビジネス勉強会


↑飛騨地域のお金の話


異文化を語る会

TAB:けっこういろんな種類のイベントをやってきたんですね!他にも安江さんが感じていることや他の活動はありますか?

安江:街にいると、高山がなんだかテーマパークような観光地になっていく感じがすることがあります。地元の人も、それについて寂しさを感じているのではないかと思います。時々ですが、観光客に冷たいどころか、観光に従事する人に対する街の人のあたりが強いときさえあります。観光と地域の繋ぎ役としてのお店の必要性はそういう時に感じるんですけどね。。。

例えば、街には都会の資本のホテルやお店ができています。昔の不便さや街の匂いのある場所などがきれいに整備されていって、どこにでもある観光地になってしまう寂しさがある反面、観光によって街の人通りは増えています。ジレンマですね。こういったこの街の空気感はここに住んでみて、地元の人々と話したりして感じたことで、このプロジェクトが始まるときには感じませんでした。仕事で作成した報告書にも書いてなかったことです。

あと、仕事とは逸れますが、いろんな生き方をしている人に会えることが、この街の面白いところだと思っています。昨年は同世代の7人で「YAMANOHITEN.2019」という企画展を開催しました。僕は山のことが好きなので、森林や生き物に関係する展示を行いました。

カフェの店長でも、建設コンサルタントの人間でも無い別の顔を持ったことで、地域内外に新しい人の繋がりが出来ました。いくつかの名刺を使い分けることって、大事なんだと思いました(笑)


↑イベントのフライヤー

安江さんの展示


↑オープニングイベントの様子


会場となったビルの外観

↑の情報誌での記事

TAB:安江さんの今後の展望としては何かありますか?

安江:従来のコンサルタント業務とは違うやり方で、まちづくりにトライしたいです。この場所はカフェとしての収益事業ですが、そこで得た情報を観光まちづくりに具体的に活かすことが出来れば、実践的な街づくりになると思います。例えば、京都市の観光協会のHP(https://www.kyokanko.or.jp/)には「事業者の方へ」というページがあって、観光振興に関する調査研究や、オーバーツーリズム(観光客が過度に訪れて、地元民の生活に支障が出ること)対策などに取り組んだ情報を地域に発信しています。公的機関と同じ機能を持つことは難しいですが、うちのお店の活動の延長線上にある一つの姿として、参考にしています。

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以上の内容は2020年2月13日に取材したものになります。
このインタビューを発表するタイミングで全国的なコロナウィルスの影響があり、公開を見合わせていました。
店舗がある高山市はコロナウィルスの影響でインバウンドのお客さんはほぼゼロの状態になり、緊急事態宣言の発令により店舗は短縮営業となっていました。現在は月〜金曜 13時〜16時 一部ドリンクメニューのテイクアウトのみで営業再開しています。
・・・
こういった状況の中、店舗のこれからの動きとしてどのように模索していくのかを安江さんに聞いてみました。大変お忙しい中お答えいただきありがとうございます。

TAB:この状況の中で3~5月までの高山の状況や街の雰囲気はどうでしたか?

安江:3月は卒業旅行の学生さんなども居たのですが、4月になって街中に人がばったり居なくなりました。本当に“バッタリ”です。GWは市長から「飛騨はお休み中です」というメッセージが出てましたね。連休中、散歩で古い町並みの近くを通ったのですが、こんな感じでした。

↑(写真:安江さん提供)

TAB:お店のお客さんの入りはどうでしたか?

安江:うちは、街中の人通りと売り上げが連動するので、激減です。。。泣
3月は去年の8割減、4月は9割減でした。まいったなぁ。。。と思っている最中に県から休業要請が来まして、やむなく休業です。
周辺のお店で、地元客の比率が高いお店はテイクアウトのサービスなども行っていますが、うちはもともと観光客が大半だったこともあって、かなり大きな影響を受けていますね。

TAB:6月以降のこのお店の方向性としてどのような模索をしていくのでしょうか?

海外のお客さんが途絶えてしまったので、これまでやっていたことが続けられなくなってしまいました。一時は高山からの撤退も視野に入れましたが、本社とも相談し、今の状況で出来ることを模索しながら、今後も高山で活動を続けて行くことにしました。まずは、今まで以上に地元のお客さんとのつながりを大事にしたいです。

このような事態になったときのリスク回避 という意味ももちろんありますが、それ以上に、地域のことを考えているのに、そこに住んでいる人の話をちゃんと拾えていなかったという反省点があります。

聞くことが決まっているアンケート調査ではなく、気軽で自然な会話の中からまちの課題を見つけ出す、ということをやってみたいです。ちょっと楽観的かもしれませんが、少なくとも、地元の人が何を考えているのかは話を聞かないとわからないので、これからのお店作りの中で「会話が生まれる場所」ということは大事にしたいです。

もう一つ、うちのお店ができることは、情報の発信を続けることだと思っています。

これから、火急の事態が過ぎ去ったら、まずは国内の旅行客が高山に戻って来ます。ただ、数年後を見越して海外へのPRに本腰を入れることも大切だと思っています。

今後は、“三密回避”が旅行のニーズに加わるので、古い町並みの混雑を、いままでと違う理由で避けなくてはいけません。観光客の分散や周遊の促進を考えるとき、これまでお店で蓄積してきた海外のお客さんとの会話が、役に立つと思っています。


TRAVELLER Coffee House

岐阜県高山市花川町58 サンビル 1F
0577-57-5656
https://travellercoffeehouse.com/

 

2020.06.03 information .