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“INTERSECTIONS edit by TAB Journal”とはTABがこれまでに関わらせて頂いた場所や空間で過ごしている方々に焦点をあて、インタビューしていくコーナーになります。今回は番外編としてTABのイベントやプロフィール写真などの撮影をお願いしている写真家の「濱田 紘輔」さんにインタビューを行いました。濱田さんは2019年春に自身初となる写真集「THE LAUNDRIES 」を発表しています。
TAB:もともと写真を撮ろうとしたきっかけはなんだったんですか?
濱田:もともと旅行が好きで20歳くらいから仕事の休みの時に一人で旅行していました。その時はカメラは持っていませんでした。25歳の時にアメリカに行くときにフィルムカメラで写真を撮るようになったんですけど、おしゃれな雑誌に載っているような写真を真似て撮っていました。笑
旅行中のある日、ニューヨークにある「Dashwood Books」という写真専門店でアリ・マルコポロスの写真集を買おうと思いレジへ持っていくときに、横に本人がいたんですよ!その時に興奮して少し会話をしたんですけど、自分を紹介するモノが無い!と思い、もどかしくてZINEを作ろうと思ってニューヨーク滞在中に写真を撮ってZINEを作りました。結局アリには渡せてはないですが、、、
↓アリ・マルコポロスの写真集
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帰国後、僕の住んでいる場所の近くで自分の作ったZINEをどこかに置いてもらおうと思って探したら、名古屋の東山にある「ON READING」さんが検索で出てきて、アポなしで持ち込んだんですね。
TAB:まさに初期衝動ですね!
濱田:ON READINGの黒田さんが丁寧に見てくれてアドバイスをしてくれました。その時にちょうど写真家の江本 典隆さんとON READINGの黒田夫妻と有志の方々で写真を勉強する会「写べり場」を開催しているという情報を教えてくれました。ちょうど第一回が終わるタイミングで欠員が出たので会に誘ってくれました。僕の周りに写真についてしゃべることや情報を共有できる人が周りにいなかったので、写べり場は本当に助かりました。今まで独学で写真を撮っていたので写真表現をしている人たちと交流できたのは本当に良かったなと思います。ここでは写真を作品にすることや表現することについて学べました。あと、ここでTABの横山さんとも出会いましたね。
↓写べり場の様子(写真:江本典隆)
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TAB:写べり場が終った後にTABのオフィスがあるST3の南原食堂で展示しましたね。
濱田:「写べり場」が終わったタイミングで、TABの横山さんと冨田くんから南原食堂で展示してみないとお誘いがありました。自分の作品を展示するという事をこれまでしていなかったので、やってみたいと思いお願いしました。
この展示はTABの冨田くんにOSBという木材とアクリルでオリジナルの額のデザインをお願いして、既存の写真展示の額ではないものを制作してもらいました。アメリカの広大な風景をテーマにした作品で、撮影場所がバラバラで一つ一つの写真が違う国みたいに見えるので、それぞれの写真に没入感があるようにして、一つ一つの写真を集中して見えるような展示構成を考えてくれました。だけど、額が主張し過ぎないようにといろいろなパターンを考えて何回も打ち合せして作りました。写真はフィルムカメラで撮影したものを自分で手焼きプリントしました。名古屋の大須にあるrainrootsの暗室を使わせてもらいました。
↓DMのデザインは@sugixon
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↓展示風景
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TAB:この展示の最初の週の土日の二日間は愛知県岡崎市にある「MatoYa」さんにも出展してもらいましたね。あと、トークイベントともしましたね。
濱田:そうですね。額を作ってくれた冨田くんも的山くんも僕と同い年で同年代の人達と何かをやるってことがこれまでなかったので新鮮で楽しかったです。その後、この展示を見てくれてたrainrootsのオーナーである湯地さんがうちでも展示してみない?と誘ってくれてrainroots内にあるギャラリースペースで展示をしました。ここではTABの冨田君と展示構成を作っていく中で見えてきた写真とデザインの関わり方をテーマにしたトークイベントをしました。
↓rainrootsでの展示風景
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TAB:この展示の後はどんな写真の活動をされてましたか?
濱田:ON READINGの黒田さんのつながりで名古屋のウェブマガジン「LIVERARY」で「カメラボーイ・ハマダの教えて先輩!」というコラムも書かせてもらいました。これは東海の地方周辺で写真の活動をされている方々にインタビューをしに行くという企画で、写真の活動をしている方々はあまり表に見えないところもあるので、直接お話しを聞かせてもらえてすごく勉強になりました。写真を撮り始めたころと比べると広がっています。ST3でイベント風景やTABのメンバーの写真も撮影させてもらいました。
ST3のイベント風景の写真はこちら
創業350周年 ヤヱガキ酒造 presents 『音うらら』 Vol.4の様子
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折坂悠太 弾き語り投げ銭ツアー2018
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自分の日本での作品制作としては2年前くらいに旅行で三重県鳥羽市にある「神島」に訪れました。この島の大きさは周囲4km、人口が300人の町で商店一つない、なにもない島なんですが、この島で若者がどのように過ごしているんだろうとふと気になって宿の若女将に話したら、当時中学1年生の息子さんを紹介してくれて、息子さんの周辺を撮影しています。このシリーズは撮り始めて1年半くらいになります。将来的にはZINEか何かにまとめたいと思っています。
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TAB:僕らが見ていてもすごく広がっているな~と思います。すごいなと。この春に発表した写真集「THE LAUNDRIES」について教えてください。
濱田:アメリカに行くと、レンタカーを借りていろんなところを回ります。自分も衣類を洗うためにコインランドリーに寄るんです。洗っている間は何もすることはないので、ぼーっとコインランドリーの周囲をいろいろ観察していました。コインランドリーにはいろんな人種の人たちがテレビを見たり、世間話をしたりして過ごしていることや洗濯物や人々の乗ってくる車だったりいろいろな生活がにじみ出ているなと思い、コインランドリーをテーマにしようと考えました。
TAB:撮影期間はどれくらいだったんですか?
濱田:撮影自体は10日間でコインランドリーは30か所訪れました。アメリカのコインランドリーは個人経営のものも多いのでそれぞれのコインランドリーに特色があって面白かったですね。
TAB:なるほど。写真集はどのような制作プロセスだったんでしょうか?
濱田:本のデザインはON READINGの黒田さんにお願いしました。まずは自分で写真を選んでから黒田さんと打ち合わせして二人で選んだ写真、撮影した写真を確認しながらどのような道筋にしていくかを何回も議論しました。大枠が決まってきて全体のデモを作って、それに合わせてロゴも何パターンかつくってもらってこの写真集に合うかどうかを検討していきました。印刷の際には印刷所立ち合い、色校のチェック、紙の確認等黒田さんと一緒に進めていきました。黒田さんにはお世話になりっぱなしで感謝しかないです、、、
↓写真集の打ち合わせ資料
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TAB:展示の写真はどのように決めていったのですか?
濱田:この写真集はポートレートがメインでいろんな人種の方々を撮影するというのが目的だったので人種のバランスが合うように選んだのと、アメリカのコインランドリーがわかるように風景写真や物の写真を重ねていきました。あとはプリントの全体の色味のバランスも確認しながら、展示する写真を決めていきました。
プリントに関しては個人でやられているプリンターの方にお願いしていて、デモをプリントしてもらって色味も調整しました。
↓「THE LAUNDRIES」展示風景の写真
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TAB:南原食堂で展示したときのからのプリントのクオリティが格段にアップしていたのでびっくりしました。展示の反応としてはどうでしたか?
濱田:おかげさまで、自分の想像以上に写真集も売れて、プリントも買ってくれる人もいました。いろんな方に見てもらえてよかったと思います。意外だったのが、僕と同世代でアメリカが好きで見に来ました!という人たちが展示を見に来てくれたことですね。自分の実感としては同世代はアメリカに興味ないのかなと思っていたところがあったので、、
名古屋、東京、豊川で展示を行って、展示を見に来てくれた人の中に、うちでもやりませんか?というお話を頂いてこの3つの展示が終った後に、鹿児島、福岡、京都で展示を予定しています。
(※鹿児島、福岡での展示は既に終了しています。)
あとはOZmagazine内の企画の撮影の仕事も頂きました。展示や写真集を発表することでいろいろと反応があってとてもうれしいです。
↓OZmagazineの写真
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TAB:今後はどのような活動をしていくのでしょうか?
濱田:さきほどの神島の作品を完成させたいと思います。これから撮るテーマはまだ考えていませんが、気になる人やものがあったらドキュメントしていきたいと思います。技術的にも実績もまだまだなので東京で活動したいと考えていて、アメリカや海外にもいろいろ見ていきたいと思います。
TAB:今後の活躍を楽しみにしています!
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濱田 紘輔 / Kosuke Hamada
https://www.kosukehamada.com/
instagram : @kosukehamadas
『THE LAUNDRIES』
ロサンゼルス周辺の地域のコインランドリーを巡って、様々な人達に出会い写真を撮らせてもらった。洗濯物や服装から、その人の好きなものや、どんな生活をしているのかが伺える。レトロな看板のデザイン、アメリカらしいゲームセンターの景品や、目を引く洗剤の自動販売機。そこにあるものすべてに“アメリカ” を感じ、僕はワクワクした気持ちになった。祖母が作った大切なキルトを洗っていたおばあちゃん。大量の靴を洗濯機に放り込むおじさん。入念に洗剤のブレンドを確かめるおばさん。ゲームをしながら待っている少年。ベビーシッターと一緒にいた女の子。彼らに大きいカメラを向けると表情やポーズを作る人もいれば、戸惑う人もいたりと反応は様々だった。ロサンゼルスは、地域ごとにエスニックタウンが存在していたりと、様々な人種の人々が暮らす街だ。それぞれのコインランドリーで見た光景は、今のアメリカ社会の、そして世界の縮図のようにも感じられた。グルグルと回る洗濯機を見ながら、僕は、アメリカのことをもっと知りたいと思うようになった。
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182mm×257mm 96P
softcover | self publishing
2600yen + tax limited : 500
下記サイトから購入できます。
https://artlabo.ocnk.net/product/6661
写真展「THE LAUNDRIES」は下記日程で開催します。お近くの方は是非行ってみてください。
今後の展示の情報は以下になります。
京都 京都写真美術館
2019年10月1日(火)~10月6日(日)
https://kyoto-muse.jp/japanesque/
2019.08.30
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